「サーフィスって、50mだけじゃないんですか?」
体験に来てくれた人から、この質問はよく聞かれます。テレビや動画で流れるのはたいてい50mの一発勝負なので、そこで競技のイメージが固まるんですよね。
答えは、いいえ、です。サーフィスの距離は50m・100m・200m・400m・800m・1500mの6つ。いちばん長い1500mは、いちばん短い50mのちょうど30倍を泳ぎます。
でも、そこなんですよ。距離が30倍になるだけなら、話は単純です。ところが世界記録どうしを100mあたりのペースに直して並べると、100mと1500mでは44%も違ってきます。同じモノフィン、同じ泳ぎ方の種目なのに、数字がまるで別の競技のように動くんです。その理由を解説します!
まず、サーフィスには6つの距離があります
サーフィス(Surface、略してSF)は、シュノーケルをつけ、モノフィンという一枚の大きなフィンで水面を泳ぐ種目です。距離は50m・100m・200m・400m・800m・1500m、さらにリレーまで揃っていて、フィンスイミングの全種目の中でいちばん豊富です。
この6つすべてで、シュノーケルの装着が義務づけられています。理由は規則にはっきり書かれていて、「サーフィスとアプニアを区別するため」。息を止めて潜るアプニアとの境界線を、道具のあるなしで引いているわけですね。
ただし、つけたうえで呼吸をしないのは反則になりません。トップ選手は50mであれば呼吸をしない選手も多いですね。もちろん、1500mで同じ泳ぎ方はできません。
ちなみに、潜っていいのはスタート後と各ターン後の15mまでです。15mゾーンの終わりより前に、シュノーケルまたは泳者の頭が水面上に出ていなければならない、と決まっています。1500mでは、この15m地点を何十回も通過していくことになります。
フィンスイミングそのものが初めてなら、フィンスイミングとは?速さ・種目・始め方を先に読むと、この6つの距離がどこに位置しているのかが見えてきます。
100mと1500mで、ペースは44%変わるんです
2026年9月時点の世界記録を並べます。男子50mサーフィスは14.83秒(2025年、ドイツのマックス・ポシャート)、男子100mサーフィスは33.71秒(2022年、ポシャート)、男子1500mサーフィスは12分09秒74(2017年、ハンガリーのアダム・ブコル)です。
これを100mあたりのペースに直すと、50mは29秒66、100mは33秒71、1500mは48秒65。100mから1500mへ移ると、100mあたり約15秒、率にして44%も遅くなる計算です。50mのペースを基準にすれば、1500mは64%遅い。これ、同じ種目名でくくっていいのかと思うくらいの差です!
時速に置き換えると、もっとはっきりします。50mは時速12.1km、100mは時速10.7km、1500mは時速7.4km。人が歩く速さがおよそ時速5kmですから、1500mの世界記録でも、小走りくらいの速さを12分以上止めずに続けている計算になります。
女子も並べておきますね。100mサーフィスは37.75秒(2024年、中国のフー・ヤオヤオ)、1500mサーフィスは13分01秒48(2011年、中国のLiu Jiao)。100mあたりに直すと52秒10で、100mとの差は38%。男子の44%より、少し小さくなります。
なぜ、距離でここまでペースが変わるのか?
それは、距離ごとに道具そのものを選び直しているからです。
モノフィンの板の硬さを、競技の現場では距離で説明します。距離が短ければ短いほど、硬い板を選択し、より強い力で水を押せるようにしている。長い距離ではその逆で、柔らかい板を選びます。基準はひとつだけで、その板を最後まで押し切れるかどうか、なんですよね。
足を入れるブーツも変わります。短距離の選手は足のサイズより小さいブーツを選ぶことがありますし、逆に長距離の選手は、長時間履いても痛くならないよう少しゆとりを持たせます。
つまり、同じ選手が50mと1500mの両方に出るとき、履いている道具からして別物ということが起こります。距離が変わると、泳ぎ方の前に道具の選び方が変わるんです!
ちなみに、競技用モノフィンは基本的に手作りの受注生産で、Fin-D Onlineでは製作に2〜3ヶ月と案内されています。距離を変えたいと思い立って、すぐ届くものではないんですよね。
大会によって、組まれる距離は違います
出たい距離が、毎回そこにあるとは限りません。
2026年のFISU世界大学選手権を見ると、個人種目は50mアプニア・100m・200m・400m・800mサーフィスと、50m・100m・200m・400mビーフィン。サーフィスは800mまでで1500mがなく、しかも50mサーフィスが個人種目にありません。短い方も長い方も、両端が落ちているんです!
東京アクアティクスセンター杯は、その逆です。種目はすべて50mのみ、フィンスイミング種目はアプニア・ビーフィン・サーフィスの3種目という構成です。
だから、1500mを泳ぎたいと思ったら、まず大会要項の種目表を見るところから始まります。距離を決めてから大会を探すのではなく、大会の種目表を見てから距離を決める。順番が逆ですね。
正直に言うと、1500mはしんどい種目です
世界記録でも12分を超えます。50mの世界記録が14.83秒ですから、およそ49倍の時間、板を押し続けることになります。勢いで終わってはくれませんし、途中で何十回もターンを繰り返します。応援する側から見ても、正直、地味です…。
でも、だからこそ面白いんです!50mが0.1秒を削り合う種目だとすれば、1500mは、決めたペースをどこまで守れるかという種目です。前半で1秒得をしても、後半でまとめて返すことがある。その駆け引きが、タイムにそのまま出ます。
AQUA FinDの所属選手たちも、半分以上はサーフィスがメイン種目です。50mで勝負する選手と、800mや1500mで勝負する選手が、同じ「サーフィス」というひとつの名前の中に並んでいます。
距離は、泳いでみてから選べばいいんです
最初から自分は短距離型だと決めなくて大丈夫です。100mを一度、本気で泳いでみるといいですよ!後半でペースがどれだけ落ちるかが、体でそのまま分かります。
その感覚が分かってから、上に伸ばすか下に絞るかを考えれば十分なんですよね。まずは50mでも100mでも、一度水面を全力で走ってみませんか? 距離の話は、そのあとで一緒に考えましょう!





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