「モノフィンって、硬いほど速いんですよね?」
この質問、体験会のプールサイドでよく聞かれます。
答えはノーです。板を速さに変えているのは硬さではなく、しなりのほうなんです。
でも、そこなんですよ。しなればいいなら柔らかい板が最強かというと、それも違います。板が水をどう押しているのか、研究で分かっていることと、私たちが現場で板を選ぶときの基準を並べて解説します!
モノフィンの板は、しならせて使う道具なんです
モノフィンは、足を入れるブーツと、水を押す板(ブレード)の2つでできています。素材について、ブーツ部分はゴムが基本で、板の部分はFRP(グラスファイバー)かカーボンが使われます。標準サイズは幅70cm前後、重さは3kg近くあります。
ブーツは足を入れるところで、ここが緩いと、蹴った力が板に届く前に逃げます。短距離の選手は足のサイズより小さいブーツを選ぶことがあり、長距離の選手は、長時間履いても痛くならないよう少しゆとりを持たせます。最初の1枚なら、自分の足のサイズ+0.5〜1.0cm前後の余裕を持たせて、フィンソックスで調整するくらいがちょうどいいですね。
板のほうは、蹴った瞬間に真っ平らなまま水を叩いているわけではありません。付け根から先端へ向かって少しずつ遅れてしなり、その形が波のように先端へ流れていきます。モノフィンスイミングの解析研究でも、推進を決めるのは脚のうねりで、動きの幅は腰から足先へ向かって大きくなっていくのが最適だとされています。
だから板は、叩くものではなく送るものなんです!体幹から生まれたうねりを、1枚のフィンがまるごと水に伝えて推進力に変えています。
じゃあ、なぜしなる板のほうが速いのか?
それは、1回のキックで捨てているエネルギーが減るからです。
大学生の水泳選手10名にモノフィンでドルフィンキックを泳いでもらった2006年のザンパロらの研究では、同じ距離を進むのに使うエネルギーが素足より約60%減っています。秒速0.8mで泳ぐときのキック頻度は素足で毎秒1.6回ほどで、モノフィンではそこから約60%下がります。効率(フルード効率)も、素足の0.62からモノフィンの0.76へ上がっています。
同じ研究グループの2002年の論文は、この効率を、細長い魚のうねりと同じように体を後ろへ流れていくしなりの波の速さから計算しています。どちらも実験室で計測された値で、レースのタイムとそのまま並べられる数字ではありません。
水面の速さも置いておきます。サーフィス50mの世界記録は14.83秒、マックス・ポシャート選手(ドイツ)が2025年に樹立した記録です。女子400mサーフィスは3分11秒88で、こちらはソフィア・フレチコ選手(ウクライナ)が2025年に出しています(いずれも2026年9月時点)。50mのほうは時速にしておよそ12km、歩く速さの2倍以上で水面を進んでいます!競技そのものの成り立ちはフィンスイミングとは?速さ・種目・始め方にまとめています。
魚の尾びれと同じところ、違うところ
魚の尾びれを模したロボットの流体解析では、しなやかな体と尾びれが生む推進運動の中に、首の後ろから尾へ進む波が含まれると説明されています。これが進行波です。板の付け根から先端へ流れるしなりも、よく似た形をしています。
ただ、しなやかなら何でもいいわけでもありません。ブルーギルの尾びれを再現したロボットの実験では、柔らかい骨組みほど、同じ頻度で出せる力のピークが小さくなっています。柔らかすぎる板は水を逃がしてしまう、というのは板選びとよく似た話ですね。
魚と決定的に違うのは、私たちが腕をかかないことです。両腕は頭の後ろで組んで一本の矢のようになり、全身のうねりで進みます!ちなみに、モノフィンの多くはウクライナ製で、ほぼ手作りで仕上げているハンドメイド製品です。
でも、硬い板を買っても波は作れません
硬さの基準はひとつだけで、その板を最後まで押し切れるかどうかです。押し切れないと、板に負けて足だけがバタバタして前に進まない。体格と力に合っていない板は、大きくても硬くても速くなりません。しなりを作っているのは板ではなく、押している人のほうなんです。
海外のショップは体重で案内していて、Leaderfinsは65kg未満はソフト、65kg超はミディアム、90kg超はハードの3段階。競技の現場では距離で説明します。距離が短ければ短いほど、硬い板を選択し、より強い力で水を押せるようにしているんです。長い距離ほど柔らかめ、と覚えると分かりやすいですね。
入門者は迷わず柔らかめから!硬い板は速く見えますが、技術が伴わない段階では、いちばん上達を遠回りさせる選択肢になります。通販で上位に出てくるフリーダイビング用のモノフィンは、それ以上に足首に大きな角度をつけて水を捉える設計で、用途が別物です。
板ではなく、腰の振り幅で決まります
モノフィンスイミングの解析研究では、腰の振り幅を抑えるほど速度が上がり、体幹が締まって、大きすぎるうねりから生まれる抵抗が減ると説明されています。足は泳者が完全にコントロールできる最後の部分で、板の面へ力を伝える役割です。つまり、しなりの波は板が勝手に作ってくれるものではなく、腰を抑えて足先へ大きく伝える泳ぎ方から生まれます。だから私たちの練習は、板の話より先に体幹の話になります。
正直に言うと、板が届くまでが長いんです
競技用モノフィンは基本的に手作りの受注生産で、Fin-D Onlineでは製作に2〜3ヶ月と案内されています。出たい大会から逆算して注文しないと間に合いません!価格もRocketfinで2026年7月時点でおよそ5万円台から16万円台と、思いつきで買える道具ではないですね。
そのうえ2021年1月1日から、対象の大会では認証フィンの使用が義務になっていて、認証済みのフィンにはブレードにCMASのシールが貼られています。認証がなければ対象の大会に出られないので、注文の前にモデルが認証済みかどうかを必ず確認します。体験のときはチームのゴムのモノフィンを貸し出しているので、自分の板がなくてもしなりの感じは試せます。
でも、だから面白いんです。2〜3ヶ月待って届いた1枚は、硬さもブーツのサイズも自分に合わせた道具になります。ゴム部分の劣化は2〜3年と言われますが、直射日光と高温を避けて保管すればしっかり使えます。大会の日程が決まったら、まずカレンダーを見て注文の締切から逆算します。
AQUA FinDには初中級者から日本代表まで、いろんなレベルのメンバーが所属しています。硬さの正解は体重の表の中ではなく、自分のキックの中にあるものです。もし「自分ならどの硬さ?」が気になるなら、体験でチームの1枚を蹴ってみるのがいちばん早いです。手ぶらで来てもらって大丈夫なので、気軽に聞いてください!





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