モノフィンはなぜ速いの?大きいからじゃない、1蹴りで進む距離が2倍以上になるからです!

モノフィンはなぜ速いの?大きいからじゃない、1蹴りで進む距離が2倍以上になるからです!

この記事のポイント
  • 1蹴りで進む距離は素足0.50m、モノフィン1.22m(Zamparoほか2006年・大学生スイマー10人)
  • 男子50mサーフィスの世界記録は14秒83、マックス・ポシャート選手(ドイツ・2025年)
  • 男子50mビーフィンの世界記録は17秒96、セバスチャン・サボー選手(ハンガリー・2025年)

「モノフィンって、あんなに大きいから速いんですか?」

この質問、体験会でよく聞かれます。無理もないです。競技用モノフィンの板は幅70cm前後で、重さは3kg近くあります。初めて実物を持った人は、だいたいその場で固まります!

たしかに、あの板はたくさんの水を押せます。でも、大きければ大きいほど速いのなら、選手は全員が最大サイズを履いているはずですよね。実際は、そうなっていません。

答えを先に言うと、大きさは理由の一部でしかありません。モノフィンが速い本当の理由は、1蹴りで進む距離が素足の2倍以上に伸びることにあります。

でも、そこなんですよ。1蹴りの距離が伸びるというのは、ただ楽になるという話ではないんです。泳ぎの組み立てそのものが変わります。何がどれだけ変わるのか、数字で解説します!

速さの正体は、1蹴りで進む距離です

水面を脚だけで泳いだときに、1蹴りでどれだけ進むかを測った研究があります。競泳の大学生スイマー10人を対象にした計測(Zamparoほか、European Journal of Applied Physiology・2006年)では、素足のクロールキックで0.50m、小さくて柔らかいフィンと大きくて硬いフィンではどちらも約0.90m、モノフィンのドルフィンキックでは1.22mという結果でした。素足のおよそ2.4倍です!

ただしこれは、決められた速度で脚だけを使って泳いだ実験室での計測です。レース中の泳ぎとそのまま比べられる数字ではありません。それでも、道具による差の大きさと順番は、はっきり出ています。

同じ研究では、1m進むのに使うエネルギーがモノフィンで約6割減り、同じ体力の使い方のまま速度が秒速0.4mほど上がったとも報告されています。2枚のフィンでの上積みは、秒速0.2mほどにとどまっています。

25mプールを1本泳ぐ場面で考えると、想像しやすいですね。1蹴り0.50mなら単純計算で50回蹴ることになりますが、1.22mなら20回ちょっとで壁に着きます。同じ25mを進むのに、脚を動かす回数が半分以下になるんです。

じゃあ、なぜ1蹴りが2倍以上に伸びるのか?

それは、同じ速さを保つのに必要なキックの回数そのものが減るからです。

この研究では、秒速0.8mで泳ぐときのキック頻度が素足で毎秒1.6回、モノフィンではそこから約6割減ったと報告されています。回数が減っても速度が変わらないなら、1回で進む距離は伸びている、ということですね。体を前に進める効率(フルード効率)も、素足の0.62からモノフィンの0.76へ上がっています。研究はこの変化の主な理由を、フィンの面積が大きくなったことに置いています。

現場の感覚も、この数字とずれていません。モノフィンは足だけでパタパタ蹴る道具ではないんです。胸からお腹、腰、脚、そして板の先へと、波を順番に伝えていく。サーフィス(モノフィンで水面を泳ぐ種目)では腕で水をかかず、体幹から生まれたうねりを、1枚のフィンがまるごと水に伝えて推進力に変えます。1蹴りが長いのは、脚ではなく体ぜんぶで水を押しているからなんですね。

実際のフィンスイマーを撮影した研究(Gautierほか・2004年)でも、レース距離が長くなるほどキックの頻度は下がり、体のうねりの幅は大きくなると報告されています。距離が延びるほど、回数ではなく1蹴りの大きさで進む泳ぎになっていくわけです。

でも、板は大きいほど速いわけじゃないんです

この研究でいちばん見落とせないのは、小さくて柔らかいフィンと大きくて硬いフィンが、どちらも1蹴り約0.90mで並んだところです。2枚のフィンを大きく硬くしても、そこから先へは伸びていません。1.22mまで伸びたのは、2枚を1枚にまとめて全身でうねるモノフィンだけなんです。

道具選びでも同じことが起きます。体格に合わない大きな板を履くと、板に振り回されて自分のリズムで蹴れなくなり、かえって遅くなります。硬い板も、押し返してくる水の反発を毎回押し切れるパワーとテクニックがある人が使って初めて速い。私たちが最初の1枚に柔らかめをすすめるのは、そこに理由があります。種目ごとの道具の違いはフィンスイミングとは?速さ・種目・始め方でも整理しています。

幅70cm前後という標準サイズも、あくまで標準です。大きい板を我慢して履くより、自分が最後まで押し切れる板で1蹴りを完成させるほうが、結果として速く進みます。速さを決めるのは板の大きさではなく、その板と自分の体が噛み合っているかどうかなんです。

同じ50mで、モノフィンはビーフィンより3秒速い

1蹴りの差は、世界のトップの記録にもそのまま出ています。2026年9月時点で、男子50mサーフィスの世界記録は14秒83(マックス・ポシャート選手/ドイツ・2025年)。いっぽう男子50mビーフィンの世界記録は17秒96(セバスチャン・サボー選手/ハンガリー・2025年)です。同じ50mを泳いで、3秒以上の差がついています!

ビーフィン(左右2枚のフィン)は、泳ぎ方の基本がクロールの種目です。脚だけでなく腕も回せるのに、それでもモノフィンのほうが速い。この数秒の差こそ、両足を1枚にまとめて体全体のうねりで進むモノフィンの推進力の大きさを、そのまま表しています。

ビーフィンが遅いのではなく、モノフィンが異常に速い。1蹴りで進む距離という物差しを持つと、この3秒がどこから来たのかが見えてきます。

正直、最初の1蹴りは誰も進みません

ここは正直に書きます。初めてモノフィンを履いた日に、1蹴りで1.22m進む人はいません。3kg近い板が脚にぶら下がった状態で、まっすぐ姿勢を保つだけで精一杯になります。板の先まで波が届かず、脚だけがバタバタして前に進まない。誰もが最初に通る場所です。

ちなみに、ブーツも悩みの種です。ここが緩いと蹴った力が逃げてしまうので、選手はきついサイズで作ります。その締め付けで足が痛くなって、長い時間は履いていられない。速さと引き換えの、地味にしんどい部分なんです…。

でも、だからこそ、体のうねりと板のしなりが噛み合った1蹴りが出たときの手応えは格別です!水が急に重くなって、体が前へ引き出されるように進みます。そうなると、1蹴りの距離という言葉が、ただの数字ではなくなります。

1蹴りの伸びは、履いた日に分かります

とはいえ、1蹴りが伸びる感覚は、読むより履いたほうが早いです。体験の方には、まずはゴムのモノフィンなどを貸し出して、合ったサイズや道具もその場でお伝えしています。手元に何もなくても大丈夫です!

もし、大きいから速いのではないという話を自分の脚で確かめてみたいなら、LINEかお問い合わせフォームから声をかけてみませんか? 気軽に聞いてください!

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