「競泳をやっていたんですけど、フィンスイミングって活かせますか?」
これもよく聞かれる質問です。そのたびに私たちは、少し前のめりになって答えてしまいます。とくに、バタフライの選手や、クロールの水中ドルフィンキックが得意な人。そのキックは、フィンスイミングでそのまま武器になります!なぜそう言えるのか、そして「そのまま全部が通用するわけではない」ところまで、正直にお話ししていきます。
うねりは、競泳とフィンスイミング共通です
フィンスイミングの主役は、両足をひとつにまとめる大きなフィン「モノフィン」です。ではこのモノフィンを、人はどう動かして進むのか?モノフィンの推進力は、上半身から始まり、腰の力で最大になると言われており、脚だけでなく体全体のうねりで生まれます。そしてこの動きを、そのまま「ドルフィンキック」と呼んでいます。
ここでピンと来た人も多いはずです。そう、競泳で言えば、スタートやターン後に潜って進む水中ドルフィンキックやバサロと、動きの成り立ちがとても近いんです。体の中心から起こした力を、足先まで伝えて水を後ろへ送る。上半身から始まって下半身で加速する、あのうねりの感覚です。実際、足首の柔らかさが水中ドルフィンキックの速さに関わるという研究報告もあります(動作そのものの分析で、フィンスイミングの競技力を直接調べたものではない点は補っておきます)。つまり、競泳で長い時間をかけて磨いてきた「うねりを作る体」は、フィンスイミングでもそのまま土台になるということです。
「水泳出身」は、じつは王道ルートです
これは私たちの感覚だけの話ではありません。フィンスイミングを統括するCMAS(世界水中連盟)自身が、「多くのフィンスイマーは、水泳やダイビングの出身だ」と紹介しています。つまり競泳からフィンスイミングへ、というのは特殊な転向ではなく、むしろ公式で王道のルートなんですね。水に慣れていること、泳げること、うねりを知っていること、心肺を追い込んだ経験があること。競泳で身につけたものの多くが、そのまま活かせます。
ミスティ・ハイマンという、わかりやすい実例
象徴的な選手がいます。ミスティ・ハイマン。2000年シドニー五輪の200mバタフライ金メダリストです。彼女は1995年、コーチが練習にモノフィンを取り入れたことをきっかけに、もともと得意だったバタフライの水中キックの適性を活かしてフィンスイミングにも適応し、1996年には世界選手権にアメリカ代表として出場したと伝えられています(USMSの記事より)。
世界トップ競泳選手が、強化としてモノフィンを取り入れた。とても腑に落ちる話ですよね。ただし、これはあくまで一人の優れた選手の事例です。「バタフライ経験者なら誰でもこうなる」という一般法則ではありませんが、影響は非常に強いということがいえる出来事かなと思います。
でも、競泳の常識がそのまま通じるわけではありません
ここからが、じつはいちばん面白いところです。競泳経験は大きな武器になる。けれど、それがそのまま全部通用するかというと、そうとも限りません。
たとえばフィンスイミングのモノフィン種目では、腕はかきません。ストリームラインの姿勢で腕を前へ伸ばし、抵抗の少ない形を保つのが基本で、推進力はフィンと体幹に任せる。呼吸も、シュノーケルを通して行うため、慣れが要ります(この呼吸のしくみはサーフィスの解説で触れています)。さらにトップレベルの競泳選手ほど、身についた泳ぎの技術がかえってクセとなって、フィンスイミングでは苦戦することも見られます。染みついたクロールやバタフライの動きを、いったん脇に置く難しさ、ということでしょう。
だからこそ、伸びしろが面白い
整理すると、こうです。競泳で培ったうねりと水感は、まちがいなく大きな土台になる。一方で、腕を使わない感覚、シュノーケル呼吸、そしてモノフィンという道具そのものには、新しく慣れていく必要がある。土台はある、でも伸びしろもたっぷり残っている。これって、経験者にとってはむしろ一番おいしい状態だと思うんです。ゼロから積む苦しさはない。かといって、やることが尽きた退屈さもない。
私たちAQUA FinDにも、競泳を代表レベルで長くやってきてフィンスイミングに出会ったメンバーもいれば、全国優勝を経験しているメンバーも。9割が競泳経験者です。最初はどうしても競泳の泳ぎ方が染み付き、そこを我慢するのに時間がかかります。けれどフィンでのキックのリズムをつかんだ瞬間から、進み方がはっきり変わる。競泳で積んできたものが、形を変えて効いてくる瞬間です。競泳との違いをもう少し知りたければ、競泳とフィンスイミングの違いも読んでみてください!





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