「フィンスイミングって、競泳から枝分かれした競技なんですか?」
この質問、体験に来てくれた方からよく聞かれます。
違うんです。この競技を作ったのは、泳ぐ人ではなく潜る人たちです。
でも、そこなんですよ。出自が潜水にあることは、ただの昔話では終わりません。統括している団体も、シュノーケルを着ける理由も、全部そこにつながっています。フィンスイミングがどこから来たのかを解説します!
最初の大会は1951年、海で開かれています
始まりはイタリアです。潜水のパイオニアだったルイジ・フェラーロが、1951年に海でフィンを履いた最初の競技会を開いた、と記録されています。同じ人物が1955年には100kmの遠泳もやっています。プールの壁を蹴ってターンする今の姿とは、ずいぶん違う景色ですね。
競技はそこから東へ広がります。ソビエト連邦で最初の大会が開かれたのが1958年。のちにモノフィンを生むことになる国が、この時点で入ってきています。
だから統括団体は、水泳連盟ではないんです
フィンスイミングを統括するのはCMAS(世界水中連盟)、日本国内はJUSF(日本水中スポーツ連盟)です。競泳のWorld Aquatics(旧FINA)とは、まったく別の団体になります。
CMASができたのは1959年1月、場所はモナコ。初代会長は、水中の探検家でダイビングのパイオニアとして知られるジャック=イヴ・クストーです。設立の会議に集まったのは、ベルギー、ブラジル、フランス、西ドイツ、ギリシャ、イタリア、モナコ、ポルトガル、スイス、アメリカ、旧ユーゴスラビアの代表。並んでいるのは水泳の連盟ではなく、潜水の連盟なんです!
ちなみに、CMASが統括する水中競技は11あります。水中で行うスポーツを、まとめて1つの連盟が束ねているんです。フィンスイミングも、その中の1つです。
日本の統括団体であるJUSFが発足したのは1988年。個人で直接JUSFに入るのではなく、JUSFに登録しているクラブやチームを経由して個人会員として登録される仕組みです。だから大会に出たいときの入り口は、まずチーム探しになります。
第1回ヨーロッパ選手権は、単独開催ではありません
1967年8月、イタリアのアンジェラで第1回ヨーロッパ選手権が開かれます。ただしこれはフィンスイミングと水中オリエンテーリングが同居する複合大会で、名前も「第1回ヨーロッパ水中技術選手権」。フィンスイミング単独の看板ではないんですね。
世界選手権が始まるのは1976年、ドイツのハノーバーです。1951年の最初の競技会から数えて25年。そして1981年、アメリカ・サンタクララで開かれた第1回ワールドゲームズに、フィンスイミングは最初から入っています。以来、この大会からはずっと採用され続けています。
モノフィンは、あとから生まれた発明品です
フィンスイミングはビーフィン、つまり2枚1組のフィンから始まっています。競技が生まれた当初、フィンといえばビーフィンしかなかったんです。
最初のモノフィンらしきものは1949年、オーストリアのクルト・シェーファーが自作のフィン2枚を紐とストラップで縛り合わせたものだと言われています。1968年には旧ソ連のポロトフが、チタン合金の骨組みにゴムを張った全長80cmほどのモノフィンを作り、翌1969年にその選手が水中種目で世界記録を更新。1971年にはFRP(グラスファイバー)製が普及して、同じ年、ソ連のナデジダ・トゥルカロがチタンの骨組みに「帆」を張ったモノフィンでヨーロッパ選手権に現れ、他を圧倒します!
1970年代初めにモノフィンが登場して、その10年が終わるまでに世界記録は全部塗り替えられています。
泳ぐ人が急に強くなったわけではありません。同じ距離を、自分の筋力だけで泳いで、足元の道具が変わっただけで記録が動いたんです!だから今も、ビーフィンとモノフィンは別の種目として並んでいます。同じプールの同じ距離でも、履いているものが違えば別のレースなんですね。
ちなみに、世界のトップモデルの多くは、今もウクライナやロシアの元チャンピオンが個人の名前で作っています。ヤコブレフ、グランキン、サルミン。
CMASがビーフィンを世界大会の正式種目に導入したのは、第1回世界選手権から30年後の2006年です。理由のひとつは、高価なモノフィンをそろえられない人にも門戸を開くため、と言われています。
潜る競技だった名残は、今のルールに残っています
定義そのものが潜水寄りです。モノフィンまたは2枚のフィンを使い、泳者の筋力のみで水面または水中を進むこと。水面と水中が、同じ一文に並んでいるんです!
種目はサーフィス、アプニア、イマージョン、ビーフィンの4本柱で、このうち2つは顔を水面に出さない種目です。イマージョンは小型の空気タンクとレギュレーターを手に持ち、顔を沈めたまま100m・200m・400mを泳ぎます。タンクが壁やタッチ板に触れたら失格なので、壁へのタッチは体かフィンです。4種目それぞれの中身はフィンスイミングとは?速さ・種目・始め方にまとめています。
では、水面を泳ぐサーフィスで、全距離のシュノーケル装着が義務なのはなぜなのか?
それは、規則にはっきり書かれています。「サーフィスとアプニアを区別するため」。息を止めて潜る種目と水面を泳ぐ種目を、道具で線引きしているわけですね。装着したうえで呼吸しない選手もいます。
15mルールも潜水と地続きです。潜れるのはスタート後と各ターン後の15mまでで、15mゾーンの外では、泳者の体か道具の一部が常に水面に出ていなければいけません。CMAS公認プールでは壁から15mの位置に幅20cmの帯が床に固定され、水面から1m以上の高さにも目印が置かれます。プールサイドの左右には泳法審判が1人ずつ立って、スタート後と各ターン後の15mを選手が守っているか確認します。
でも、私たちの9割は競泳経験者なんです
競技の出自は潜水でも、今この競技をやっている人の入り口は水泳であることが多いです。CMAS自身が「多くのフィンスイマーは、水泳やダイビングの出身だ」と紹介しています。AQUA FinDも、メンバーの9割が競泳経験者です。
正直、競泳から来た人ほど最初は苦労します。競泳の泳ぎ方が染み付いていて、そこを我慢するのに時間がかかります。
でも、だからこそ面白いんですよ!フィンでのキックのリズムをつかんだ瞬間から、進み方がはっきり変わります。潜る人が作った競技に、泳ぐ人が入っていく。その両方が混ざっているのが、今のフィンスイミングです。
もし少しでも引っかかったなら、次は一度履いてみるのが早いです。体験の方にはゴムのモノフィンなどをお貸しするので、手元に何もなくても大丈夫。私たちは池袋や辰巳で泳いでいます。気軽に聞いてください!





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