「フィンスイミングの練習って、ずっとモノフィンで泳いでいるんですか?」
体験に来てくれた人から、よく聞かれる質問です。
いいえ。泳いでいる時間より、止まっている時間のほうがずっと長いんです。
でも、そこなんですよ。速くなる部分は、その泳いでいない時間のほうに詰まっています。私たちがプールと陸で実際にやっていることを解説します!
全力で泳ぐのは、いつも1本ずつなんです
練習の柱は、全力で1本泳いで、休んで、また1本という繰り返しです。2025年に発表されたモノフィンの研究では、平均17.3歳の男子エリート13人が50mを4本泳いでいます。間のレストは2分ずつ。タイムは水面を泳ぐサーフィスが平均19.94秒、息を止めて水中を進む形が平均17.73秒。キックの回数は1分あたり121回と135回です。
数値はどれも実験室条件下での計測なので、自分のタイムと直接比べるものではありません。それでも、1セットの形はそのまま練習の風景です。泳いだ時間を足すと、4本で80秒ほど。レストは合わせて6分です!
ちなみに50mサーフィスの世界記録は14.83秒(2025年、ドイツのマックス・ポシャート)で、これが2026年9月時点の最速。全力の1本は、それくらい短い時間なんです。距離や種目の全体像はフィンスイミングとは?速さ・種目・始め方にまとめています。
休んでいる2分は、体まで休んでいません
同じ研究で心拍を見ると、スプリント中は水面が1分あたり183〜185拍。息を止めて潜る形が167〜177拍です。回復の時間帯に入っても、166〜174拍と141〜151拍のまま。乳酸の濃度は、2つの条件で差が出ていません。
じゃあ、レストは何のための時間なんですか?
それは、次の1本をまた全力で泳ぐためです。心拍が落ち着ききる前に、次のスタートが来ます。だから練習は、泳ぐことと息を整えることが交互に並びます。壁につかまって時計を見ている時間も、メニューの一部です。
15mの距離感は、練習でしか作れません
サーフィスで潜っていいのは、スタート後と各ターン後の15mまで。15mゾーンの終わりより前に、シュノーケルか泳者の頭が水面上に出ていなければいけません。ゾーンの外では、体か道具の一部が常に水面に出ている必要があります。
CMAS公認プールでは、両端の壁から15mの位置に幅20cmの帯が床に固定され、水面から1m以上の高さにも目印が置かれます。プールサイドの左右には泳法審判が1人ずつ立ち、15mを守れているかを確認します。目印はあっても、越えれば失格。だから、その手前で浮き上がる感覚は、練習で作っておくしかありません。
実は、スタートと引き継ぎだけの日もあります
スタートにやり直しはありません。ピストルの合図の前に動いてしまった選手は、その場でフォルススタートの失格です。主審の短い笛でジャージを脱ぎ、フィンとシュノーケルの準備を始めて、ここから使えるのは最大1分15秒。
リレーはもっと細かいです。前の泳者が壁にタッチする前に、次の泳者の足やフィンがスタート台を離れていたら、そのチームは失格。混合リレーは男・女・男・女の順が固定で、順序を変えただけで失格になります。ただし、飛び出しても自分でミスに気づいて壁に戻り、あらためてスタートすれば失格になりません。台に上がり直す必要もないんです!
レース中にフィンやシュノーケル、タンクの一部でも失えば、器具放棄としてゴール時点で失格。国内で多いのは、前の組のレースが実施中なのにプールへ手や足を入れてしまうケースです。リレーで第2泳者以降が、自分のスタート前にプールへ足やフィンをつけてしまうケースも多い。泳力とまったく関係のないところで消えます…。だから、引き継ぎだけを何本も繰り返す日があります。
50mと1500mで、練習は同じなんですか?
同じにはなりません。まず道具から違います。モノフィンのブレード(板)の硬さは距離で変わり、50mを泳ぐ板と1500mを泳ぐ板は別物です。硬い板で長い距離を泳げば、序盤で脚が終わります。硬いフィンは関節や体への負担も大きく、怪我のリスクが高まるので、入門者は柔らかめから始めます。
AQUA FinDには、女子800mサーフィスの日本記録7分22秒27(2025年3月)を持つ上野愛美香もいます。所属選手の半分以上はサーフィスがメイン種目ですが、同じ種目でも距離が変われば、押す板から違うんです!
でも、いちばん地味に効くのは陸の時間です
Finswimmer Magazine も、水に入れない期間の過ごし方として陸のトレーニングを挙げています。コンディションを保ちながら、泳ぎの効率に取り組める方法だという書き方です。
陸で作るもので分かりやすいのが足首です。競泳のドルフィンキックを対象にした研究では、足首の可動域をたった10%ほど制限しただけで、速度がはっきり落ちています。フィンスイミングでの計測ではありませんが、足首が推進に効くという方向は同じです。フィンを履いたときの計測では、8つの筋肉のうちもっとも活動が増えたのは大殿筋、つまりお尻の筋肉で、増加率は約124%です。膝ではなく、お尻とみぞおちから動かす競技です。こちらも各研究の実験室条件下での計測値で、研究どうしを単純に比べることはできません。
正直、この時間は地味でしんどいです…。でも、足首と体幹を先に作っておくから、水に入っている時間を全部「速く泳ぐこと」に使えます!
アプニアの練習は、一人でやらないでほしいんです
アプニアは50mだけ(短水路の場合は25mも)に設けられた種目です。途中で顔が水面に出てしまうと失格。CMASの規則では、13歳以下の選手は50mアプニアに出場できません。短水路の25mアプニアなら、12歳から13歳の選手も出場できます。
息こらえによる意識の喪失(ブラックアウト)は、水面近くで起きやすいことが知られています。アプニアは、細かいルールと審判、そして周囲の目があるなかで行われる管理された環境だから成立する種目です。いきなり一人で、あるいは自己流で無呼吸の潜水を真似ることだけは、しないでほしいんです。
最初の1回は、手ぶらで来てもらって大丈夫です
フィンスイミングの基本の道具は3点だけです。フィン、シュノーケル、そして水着類一式。ただ、体験の人にはゴムのモノフィンなどを貸し出すので、手元に何もなくても大丈夫です!
ちなみに、競技用モノフィンは手作りの受注生産で、Fin-D Onlineでは製作に2〜3ヶ月と案内されています。ゴム部分の劣化は2〜3年と言われるので、直射日光と高温を避けて保管します。最初の1枚は、借りて泳いで、硬さの好みが見えてから決めても遅くありません。
「ずっと泳ぎっぱなしはきつそう」で止まっているなら、その心配は要りません。全力の1本と、そのあとの2分。それが練習の基本の形です。気になったら、LINEやお問い合わせフォームから気軽に聞いてください!





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