フィンスイミングのルールとは?15mルール・スタート・リレー・シュノーケル規格・失格になる瞬間まで

フィンスイミングのルールとは?15mルール・スタート・リレー・シュノーケル規格・失格になる瞬間まで

  • 潜れるのはスタートと各ターン後の15mまで。CMAS公認プールでは床に幅20cmの帯で15m地点が示され、専任の泳法審判が監視している
  • シュノーケルは内径15〜23mm・全長430〜480mmと寸法まで規格化。サーフィスで装着が義務なのは「アプニアと区別するため」と規則に明記されている
  • レース中にフィンやシュノーケルを失うとゴール時点で失格。アプニアは50m超の競技会そのものが禁止されている
  • リレーで飛び出しても、自分で気づいて壁に戻ってスタートし直せばチームは失格にならない(スタート台に上がり直す必要もなし)

大会を見に来てくれた人から、いちばん多くもらう質問がこれです。「今の、なんで失格になったの?」

気持ちはすごくわかります。スタートしてから15mくらいまで、選手はほとんど水中にいます。そこから、すごい水しぶきとともに、迫力溢れる泳ぎで一気にゴールタッチ。まるで「水上のF1」と言われるその泳ぎ、初めて観る人は、あっという間のできごとに、圧倒されます。

それなのに、レースが終わると電光掲示板に「DSQ」の三文字が出る。レースは淡々と進んでいくので、何が起きたのか、わからないまま次のレースが始まってしまう…。

だからこそ、ルールを知ってから見ると、この競技はさらに面白くなります!ここでは国際ルールの原典を実際に読み込んで、フィンスイミングの競技規則を「観る人にもわかる形」で解説します。読み終わるころには、あの失格の理由が見えるようになっているはずです!

フィンスイミングのルールは、たった1行の定義から始まる

まず大前提から。フィンスイミングの世界共通ルールは、CMAS(世界水中連盟)が定める「CMAS Finswimming Rules」という規則集にまとまっています。現行版は Version 2025/01。2025年1月1日から発効している版です。日本の大会も、この国際規則を土台に運営されています。

その規則集の第1条は、驚くほど短い。フィンスイミングとは「モノフィンまたは2枚のフィンを使い、水面または水中を進むこと。ただし泳者の筋力のみによる」と定義され、そのうえで「支持物やあらゆる機構の使用は、たとえ筋力で動くものであっても競技では認められない」と続きます。

この最後の一文が、じつは効いています。「筋力で動く機構すらダメ」とわざわざ書いてある。フィンという道具を使う競技だからこそ、どこまでが人間の力でどこからが機械の力なのか、入口で線を引いているわけです。以降の細かい規定は、ほぼすべてこの一行を守るためにあります。道具の規格が異様に細かいのも、ここに理由があります。

すべての種目を貫く「15mライン」とは?

フィンスイミングでいちばん有名で、いちばん失格を生んでいるのが、この15mルールです。

水面を泳ぐサーフィスでは、潜っていいのはスタート後と各ターン後の15mまで。規則には「15mゾーンの終わりより前に、シュノーケルまたは泳者の頭が水面上に出ていなければならない」と書かれています。そして15mゾーンの外では、泳者の体か道具の一部が常に水面に出ていなければいけない。つまりサーフィスは「水面を泳ぐ種目」であることを、この2条で担保しているんです。

CMAS公認プールでは、両端の壁から15mの位置に幅20cmの帯がプールの床に固定され、さらに同じ位置の水面から1m以上の高さにも目印を置くと決まっています。プールサイドの左右には泳法審判が1人ずつ立っていて、その仕事は明確に「スタート後と各ターン後の15mを選手が守っているか確認すること」と規定されています。専任の監視役がいる、とゆうことですね。大会によっては兼務されていることもありますが。

そしてビーフィン種目。ビーフィンの泳法はクロールに限定されていて、ドルフィンキックが許されるのは同じくスタート後と各ターン後の15mゾーンの中だけ。15mを越えてからうねると、それだけで規則違反になるということです。さらにスタート時は、両フィンをスタート台の前端に平行に置くことまで決められているので、競泳で主流のクラウチングスタートは違反になります。ビーフィンは「クロールで泳ぐ競技」という性格は、ルールで徹底的に定められているんです。

シュノーケルは、内径と長さの規格が決まってる

ここがみんないちばん「そうなんだ!」となるところです。サーフィスとビーフィンで使用するシュノーケルには、いろいろな寸法の規格があります!

認められているのは、筒の断面が円形のもので、内径は最小15mm〜最大23mmの範囲内。全長は最小430mm〜最大480mmの範囲内。しかも規則には「長さは筒の内側で測る」「上端は斜めに切っても丸い縁にしてもよいが、長さは最も高い点まで測る」とまで書いてあります。競泳のフェアリング(整流のためのカバー)付きのシュノーケルは不可です。あくまで呼吸のためだけの道具である、という縛りです。

なぜここまで太さや長さに細かいのか。長さが変われば水の抵抗も変わる。放っておけば「速いシュノーケル」の開発競争が始まってしまいます。そうなると、「呼吸をする」という安全に関わる部分を犠牲にした、競技特化のものが作られてしまう可能性がある。それを規格で封じて、安全を確保しつつ、勝負を泳ぎそのものに戻している。第1条の思想がここにも効いているわけですね。

もうひとつ。サーフィスでは全距離でシュノーケルの装着が義務づけられているのですが、その理由が規則にはっきり書かれています。「サーフィスとアプニアを区別するため」。種目を分ける境界線そのものが、シュノーケルなんですね。だから外して泳ぐ選択肢は最初から存在しません。
ただし、「シュノーケルは付けるけど、呼吸はしない」というのは別にOKです。トップ選手は50mであれば呼吸をしない選手も多いですね。ただし、安全面を第一に、無理はしないようにしましょうね。

ちなみにモノフィンにも認証制度があります!CMASの認証を受けたモノフィンには、私たち消費者への販売前に、メーカーによってCMASのマークとQRコードの付いた青い認証ステッカーが貼られる決まりで、世界選手権・アジア選手権・ワールドカップなどの国際大会への出場と、記録の公認には認証ステッカーが貼ってあるフィンでの出場が必須となっています。

ちなみに、日本国内においても、日本水中スポーツ連盟による器具認証チェックを受けることで、ブレードに銀色の丸い認定シールが貼付されます。公認大会に出場する際は、この認定シールが貼ってある必要があり、招集所で道具が規格に合わないと判断されればスタート台に上がれませんし、レース後に不適合が判明した場合はその時点で失格です。

なお、国内におけるこの認定シールは、ご自身で取得する必要があり、各大会時に受付にて手続きを行うことができます。購入時にはCMASの認証ステッカーしか付いてこないので、注意しましょう。

アプニアだけ、ルールの作りが根本から違う

息を止めて水中を進むアプニアは、他の種目とルールの発想がまるで違います。

まず、シュノーケルは禁止。フィンひとつで戦います。そして「アプニア中、泳者の顔は全区間にわたって水中になければならない」と、定められているので、途中で顔を上げた時点で終わりです!

注目したいのは、規則が距離を伸ばさせない作りになっていることです。プール競技は基本的にどんな距離でも開催できるのに、アプニアだけは「50mを超える距離の競技会は認められない」と明確に禁じられているんです。

加えて、13歳以下の選手は50mアプニアに出場できません。ただし、短水路の大会で開催される25mアプニアであれば、12歳-13歳の選手も出場が可能です。息を止める種目だけ、上限と下限の両方から囲ってあるわけです。ルールブックを読んでいて、いちばん安全に配慮がされている部分ですね。

日本ではしばらく開催されていなくて、非常に残念ですが、空気タンクを持ちながら潜って泳ぐイマージョンも独特です。

使えるのは酸素富化していない圧縮空気のみ。プール競技での使用タンクは、100mで最小容量0.4リットル、200mと400mでは最小1.0リットル。充填圧力は200バール(20MPa)を超えてはならず、すべてのタンクは競技の2年以内に耐圧試験を通っていなければいけません。大会ごとに必ずチェックが必要であり、競技前の器材チェックには、空の状態で提出します。

そしてイマージョンには、地味に驚く規定があります。ワールドカップの項に「USA specification」という但し書きがあって、アメリカではイマージョン種目が認可されていないため、同国開催時はプログラムを変更する、と書いてあるんです。国際規則の中に、特定の国だけ種目が開催できないという例外が明記されている。競技が世界に広がる過程で生まれた、リアルな折り合いだと思います。

ちなみに、日本ではイマージョン種目の開催自体は可能なので、是非とも1日も早い種目の復活をお願いしたいところではありますが、一方、法律上、海外の選手が日本国内に空気タンクを持って入国することが法律上いろいろな規制があるため、もし今後国際大会を開催する場合は、その辺が課題になるところです。

AQUA FinDのメンバーにも、イマージョン種目に出場したくて資格をとった選手がいます。それにも関わらず、大会で開催してくれないために、資格の更新代だけがかかってしまっているという問題が発生しています。心待ちにしてる選手たちのためにも再開する日がくることを祈りましょう。

どんなときに失格になるの?

では本題。実際に失格=DSQが出る場面を、規則の順に並べます。

スタートで動いたとき。ピストルの合図の前に飛び込む、あるいは動いてしまった選手は「フォルススタート」として失格です。フィンスイミングにはやり直しの猶予はありません。ただし進行の扱いは細かく決まっていて、すでにスタート合図が出てしまっている場合はレースをそのまま続行し、終わってから該当者を失格にします。

スタート準備そのものにも時間制限があります。主審の短い笛の連続で、選手はジャージやTシャツなどを脱ぎ、フィンやシュノーケルの準備を始めます。ここから準備に使えるのは最大1分15秒。1分15秒後に長い笛が吹かれ、スタートの合図とピストルが行われるので、それまでにスタート台に上がっておかなければなりません。ちなみに、間に合わなかったとしても、飛び込むことは可能ですが、すでに他の選手がスタートした後になるので、大幅に損をしてしまいます。

もし不具合があれば、長い笛が鳴る前に手を挙げて手続きの中断を要求できます。そして規則には、なかなか渋い一文もあります。それは「審判が選手を立ち上がらせる手助けをしてはならない」というルール。必ずスタート台に立ち上がることができるよう、練習をしておきましょう。モノフィンを履いてスタート台に立つのって意外と難しいです。

道具を落とした、外した。これはフィンスイミング特有だと思いますが、レース中にフィン、シュノーケル、タンクなど、道具の一部・または全部を失った選手は、「器具放棄」として、ゴール時点で失格となります。フィンが脱げてしまった、シュノーケルのゴムが切れて外れてしまった、こういう場合は、全部失格。不幸中の幸い、ではなく、不幸中の不幸ですね…。

コースを越えた・妨害した。自分のレーンを越えた選手、他の選手を何らかの形で妨害した選手は「インターフェア」で失格となります。しかもそれが故意だと判断された場合、主審は審判長と、その選手の所属連盟に報告する義務を負います。

国内でこの失格が多いのは、前の組のレースが実施中にも関わらず、プールに手や足を入れてしまったケース。また、リレーの時に、第2泳者以降の選手が、自分がスタートする前にプールに足やフィンをつけてしまったケースなども非常に多く見られます。リレーの際は、第1泳者に限らず、スタートの合図より後にプールに触れてはなりません。

タッチ板の上から出た。電子タッチ板の上を越えてプールから上がるのは禁止で、やると失格になります。ただし、大会によっては、競技役員の指示のもと、タッチ板の上から退水するよう言われることもあるため、その際は例外です。

タンクが壁に触れた。イマージョンでは、タンクがプールの壁やタッチ板に触れてはいけません。ターンのタッチも体かフィンで行う必要があり、タンクでのタッチは認められていません。

これは、安全上の理由で定められているルールであり、この空気タンクは圧縮空気という、非常に危険な性質なものを充填しているため、慎重に扱う必要があります。万が一落としてしまったり、強くぶつけてしまって大きな衝撃がかかり、タンクが爆発してしまったりしたら、大事故です。
ちなみに「ボンベ」という言い方もありますが、これはボム(bomb)=爆弾から来ていて、つまりそういうことです。

そのほか。プール競技では時計など同種の機器の携行が禁止。体へのテーピングも認められておらず、規則はキネシオテーピングを名指しして「医学的な理由があっても競技上の優位を与えると考えられるため許可されない」と書いています。ここまで禁止するか、という徹底ぶりですね。

ちなみに審判のジャッジについての抗議についても規定があります。近年、サッカーなどでは映像による審判や判定が取り入れられていますが、フィンスイミングにおいては今だに取り入れられていません。そのため、「CMASが公認していない機器で撮影された写真や映像は判定材料として採用されない。」というルールが書かれています。プールに元から設置されている機材でも、CMAS公認でなければ同じ扱いです。とにかく、手元のスマホ映像では覆らない、ということですね。

なお、どんな理由であれ、審判のジャッジに抗議をするためには、抗議料を添えて、30分以内に抗議書を提出する必要があります。それを超えたら、受け付けてもらうことはできません。また、先ほどの映像審判は導入してもらえないという現状から、ほとんどの場合、抗議が通ることはありません。審判も人間ですから、見間違えや、見切れない時などもあり、明らかに誤審!!ということも全然あります。なので、時代にあった方式へ改善の余地がありますよね。

リレーには、ほとんど知られていない救済ルールがある

リレーの引き継ぎは、原則としてかなり厳格です。前の泳者が壁にタッチする前に、次の泳者の足やフィンがスタート台を離れていたら、そのチームは失格。混合リレーは男性2名・女性2名で、泳ぐ順番は男・女・男・女に固定されていて、この順序を変えただけで失格になります。泳ぎ終えた選手は、審判の指示があるまでタッチ板から1mほど離れ、自分のレーンに留まる。そしてリレーを終えた選手が、最終チームの最終泳者のタッチ前に水から出ることも禁止です。

……と、ここまでは厳しい話ばかりなのですが、じつは同じ条文の後半に、驚くほど人間的な一文が入っています。

飛び出してしまっても、泳者が自分でミスに気づいて壁に戻り、あらためてスタートすれば、そのチームは失格にならない。しかも「スタート台に上がり直す必要はない」と明記されている。

これ、けっこうすごいことだと思いませんか?多くの競技では、フライングは気づいた時点でもう取り返しがつきません。でもフィンスイミングは「自分で気づいて戻れば、なかったことにしてよい」と書いているんです。(笑)適用している人は見たことないですがね。

ルールを知ると、大会の見え方が変わる

ちなみにオープンウォーター(海や湖のレース)はルールがまた別物で、潜水そのものが禁止。違反すると泳法審判がまずイエローカードを出し、繰り返せばレッドカードで失格・退水を命じられます。サッカーみたいですよね!他の選手を故意に妨害した場合も同じくカード制で、暴力的な行為は一発レッドです。水温が14度を下回る場合は冬用のウェットスーツのようなネオプレンスーツの着用が義務づけられる、という安全規定もあります。

ルールというと堅苦しく聞こえますが、読んでみると全部に理由がありました。シュノーケルの内径も、アプニアの50m上限も、リレーの救済条項も、「泳ぐ力だけで競わせたい」「安全に競わせたい」「フェアに競わせたい」の3つから引かれた線でした。そこがわかると、水中で何が争われているのかが見えてきます。

AQUA FinDは「初中級者から日本代表まで」が所属するチームです。ルールを覚えてから始める必要はまったくありません。でも、もし今度どこかで大会を見る機会があったら、15mラインだけ気にして見てみてください。選手が浮上する位置がぜんぶ違うことに気づくはずです。あそこが、この競技のいちばん面白い勝負どころなんです!

競技そのものをもう少し広く知りたい方は、フィンスイミングとは?速さ・種目・始め方もあわせてどうぞ。

出典

  • CMAS Finswimming Rules Version 2025/01(2025年1月1日発効・CMAS世界水中連盟)

  • CMAS Finswimming Rules Version 2023/01(比較参照用)

  • CMAS 公式サイト フィンスイミング規則ページ

本記事の競技規則に関する記述は、上記CMAS競技規則の現行版(2025/01)の条文にもとづいています。国内大会では連盟の定める細則が加わる場合があります。

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